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| んざとぅまじりぬ いふぁぬ かんじぇーくーぬ |
| 美里間切の伊波の金細工の |
| あ美里村伊波に住んでいる鍛冶屋の |
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| くゎてぃ かなーふぃー てえふぁ かなーふぃーが せるくとぅや |
| 喰て加那兄、大笑加那兄がせる事や |
| あ道楽者で能天気な加那兄が やらかしたんだと |
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| つぃじ ぬ とぅち ぬ もーさー しま ぬ にせたん あんねーなしくに ひちくさい |
| 辻の「時」の真牛 島の二歳達ん 案内無しくに引き越さい |
あ辻遊郭の妓楼「時」の遊女真牛を、近所の兄さんたちに断りもなく連れ出したん あだって |
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| いぇ かなーふぃー ちゅいつぃちさんじゅうにち なるまでぃ |
| いえ、加那兄。一月三十日なる迄、 |
あ真牛はお金のことが心配で、
あ「ねえ加那兄、遊び暮らして、もう一ヶ月がたってしまったけれど |
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| わん かねえや いちゃしくいゆが |
| 我がかなえや いきやし呉くゆが |
| あわたしの揚げ代(遊女などと遊ぶための代金)はどうやって払うつもりなの?」 |
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| しわすな もーさー うや ぬ ゆじいぬ ふうちん ありや かなかん あいよ |
| 心配すな真牛 親のゆずりの鞴有いや 金子も有いよ |
あ能天気な加那兄、余裕たっぷりに胸を張って、
あ「心配いらないよ、真牛。親からゆずられた鞴(ふいご)もあるし、金床もあるん あだから。 |
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| うりうてぃ あんまー ふぃんせ すんどぅ |
| 其り売て 阿母返済すんどう |
| あこれを売ったお金を揚げ代に、おまえのアンマー(抱え親)に支払うつもりさ」
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| いゅるうち すんうち うぃどぅまい かんじゃやん はちちゃりば |
| 言る内する内 上泊鍛冶屋も走ききりやりば |
| あそんなこんな言っているうちに、那覇市上泊の鍛冶屋にさしかかり、 |
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| ふうちんけんそり かなかけんそり さんてえまん こういるちゅー や ちゅいん もうらん |
| 鞴買んそり金子買んそりさんてえまん 買ういる人やひとりも参らん |
あ「鞴(ふいご)買わんかね、金床いらんかね」
あところがどっこい、買う人なんてひとりもいない。 |
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| いゅるうちすんうち とぅまいたかはしな ゆしかきてぃ |
| 言る内する内 泊高橋にや寄しかきて |
| あそんなこんなをしているうちに、泊高橋の近くまで来てしまった。 |
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| いぇ もーさー いゃ や うま をぅてぃ たばく ふちをぅり |
| いえ、真牛 汝や其処居て煙草吹ち居り |
あ加那兄が張り切って、
あ「よし真牛。おまえはここで一服して待っておいで。 |
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| わんや あまんじ たーらじん かてぃくう |
| 我んや 彼処行じ 俵銭借て来う |
| あ「わたしはあそこに行って、まとまったお金を借りてくるから」 |
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| あまんや んじゃくとぅ くゎてぃ かなーふぃー てえふゎ かなーふぃー んでいち |
| 彼処や行じや事 喰てい加那兄 大笑加那兄んで言ち |
あところがどっこい、お金の無心に行ってみたらばだれもかれもが
あ「のんきで道楽、加那兄」 あと鼻先であしらって |
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| じんからするちゅー や ちゅいん もーらん |
| 銭借らする人や ひとりも、もーらん(居らん) |
| あお金貸してくれる人なんてだれもいない。 |
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| いぇ もーさー わしたいきが ぬ とぅまいたかはし けえり うてぃら |
| いえ、真牛 我した男の泊高梁けえり落てぃら |
あ「よし真牛。こうなったら、わたしも男だ。潔く泊高橋から身投げして、今度の始末 あをつけてやる」
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| まぢ まてぃ かなーふぃー んじゃる さんぐゎちさんにち |
| まず待て加那兄 去る三月三日 |
| まず待て加那兄 去る三月三日三日さんぐゎんむえー んかきてぃあむん |
| まず待て加那兄 去る三月三日三日三貫模合も掛きてあむぬ |
| あ「ちょっと待ってよ、加那兄。この間の三月三日に三貫の模合をかけているの。 |
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| うりとぅてぃ あんまー ふぃんせー すんどぅ |
| うり取て阿母返済すんどう(て) |
| あその模合のお金をもらって、揚げ代にすることにしましょうよ」
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| さってぃむ もーさー しゅびしゃるい |
| さつてむ 真牛首尾しやるい |
| あ「さすがだ、真牛。恩に着るよ」 |
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| いゅうち すんうち にしんじょうも はちちゃりば |
| 言る内する内 西武門も走ききりば |
| あそんなこんなをしているうちに、辻近くの西武門についていた。 |
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| いぇ もーさー んまんまちや に うちぇる |
| いえ真牛 其処の町屋に置ちえる |
| あ「ねえ真牛、ここの店で売っている |
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| くーが てぃびちん ちぬん もちゃゐ いゃさちなりよ |
| 卵手引も衣も持ちやり 汝や先なりよ |
| あ卵と着物と、アンマーのお土産にしよう。さあ、おまえが先になれよ」
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| いゅうち すんうち とぅち ぬ じょうも はちちゃりば |
| 言る内する内 時の門も走ききやりば |
| あそんなこんなをしているうちに、とうとう妓楼「時」へやってきた。 |
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| うしたいびら たーがやあ くま ぬ もーさーどぅ そうてちぇんど |
| うしたいびら。誰がやあ。此処の真牛ど添うてちえんど |
あ加那兄は店先で胸を張り、
あ「こんにちは。ごめんください」 あすると、中からアンマーの声がして、 あ「誰かねえ?」 あ「加那ですよ。おたくの真牛を連れてきましたよ」 |
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| さってぃむ かなーふぃー ちゅいつぃちさんじゅうにち なるまでぃ |
| さつてむ、加那兄 一月三十日なる迄 |
| あ「あらま! 加那兄。一ヶ月も |
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| わった もーさーや かんし ようがらち |
| 我つた真牛や かんしようがらち |
| あわたしの真牛を連れまわして。おまけにこんなに痩せさせて!」
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| いぇ あんまー なったーもーさー や んじゃるつぃちから かんどぅあたる |
| いえ、阿母 汝達真牛や去る月から かんどあたる |
| あ「あのですね、アンマー。真牛はわたしが連れ出したときからこうでしたよ」 |
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| いぇ かなーふぃー うりんしむしが しま ぬ つぃとぅ ん かねえ ん むっちちぇみ |
| いえ、加那兄 其りも済むしが 島の苞もかなえも持つちちえみ |
あ「はてさて、そうだっけ、加那兄。まあ、そんなことはどうでもよいけれど、あんた、 あお土産も揚げ代も持ってきたんでしょうね」 |
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| いぇ あんまー わした いきが ぬ うりんわしりゆみ |
| いえ、阿母 我した男のうりん(此れも)忘りゆめ |
あ「もちろんですとも、アンマー。わたしだって男です。そんな大事なこと忘れるはず あがありますかってんだ」
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| かふうし かなーふぃー うらざん まどぅ やさ いっちあしび |
| 果報し加那兄 裏座んまどやさ 入つち遊び |
あ「さすがは加那兄。ありがとう。ちょうど裏の座敷が空いてるよ。さあさあ、お入り あになって、たんと遊んでおいきなさい」 |
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